2019年02月03日

山尾三省ベストセレクション『火を焚きなさい』

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先日、椿商店に買い物に行ったら、お店にあった山尾三省さんの本。

『火を焚きなさい』2018年10月31日、野草社より刊行。1,800円。

「詩をもう一度、万人のものに取り戻したい。」

詩人・山尾三省(1938-2001)の著作と詩集から48篇の詩、

4篇の散文の作品を選び、編集したもの。

装画・漫画にnakabanさんです。

じっくり静かな気持ちで、山尾さんの言葉と向き合います。











こちらは、生前の山尾さんの記事。とても素敵で愛が溢れているので、シェアします。

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子供達への遺言・妻への遺言  山尾 三省

 僕は父母から遺言状らしいものをもらったことがないので、ここにこういう形で、子供達と妻に向けてそれ書けるということが、大変うれしいのです。
 というのは、ぼくの現状は末期ガンで、何かの奇跡が起こらな い限りは、2、3ヶ月の内に確実にこの世を去って行くことにな っているからです。
 そのような立場から、子供達および妻、つまり自分の最も愛す る者達へ最後のメッセージを送るということになると、それは同 時に自分の人生を締めくくることでもありますから、大変身が引 き締まります。

 まず第一の遺言は、僕の生まれ故郷の、東京・神田川の水を、もう一度飲める水に再生したい、ということです。
神田川といえば、JRお茶の水駅下を流れるあのどぶ川ですが、あの川の水がもう一度飲める川の水に再生された時には、劫初に未来が戻り、文明が再生の希望をつかんだ時であると思います。

 これはむろんぼくの個人的な願いですが、やがて東京に出て行 くやもしれぬ子供達には、父の遺言としてしっかり覚えていてほ しいと思います。

 第二の遺言は、とても平凡なことですが、やはりこの世界から 原発および同様のエネルギー出力装置をすっかり取り外してほし いということです。
自分達の手で作った手に負える発電装置で、すべての電力がまかなえることが、これからの現実的な幸福の第一条件であると、ぼくは考えるからです。

 遺言の第三は、この頃のぼくが、一種の呪文のようにして、心の中で唱えているものです。
その呪文は次のようなものです。
 南無浄瑠璃光・われらの人の内なる薬師如来。
 われらの日本国憲法の第9条をして、世界の全ての国々の憲法 第9条に組み込まさせ給え。武力と戦争の永久放棄をして、すべて の国々のすべての人々の暮らしの基礎となさしめ給え。

以上三つの遺言は、特別に妻にあてられたものなくても、子供 達にあてられたものでなくてもよいと思われるかもしれませんが、 そんなことはけっしてありません。

ぼくが世界を愛すれば愛するほど、それは直接的には妻を愛し、 子供達を愛することなのですから、その願い(遺言)は、どこまでも深く、強く彼女達・彼ら達に伝えられずにはおれないのです。
 つまり自分の本当の願いを伝えるということは、自分は本当に あなたたちを愛しているよ、と伝えることでもあるのですね。

 死が近づくに従って、どんどんはっきりしてきてることですが、 ぼくは本当にあなた達を愛し、世界を愛しています。
けれども、だからといって、この三つの遺言にあなたがたが責任を感じることも、負担を感じる必要もありません。

あなた達はあなた達のやり方で世界を愛すればよいのです。
市民運動も悪くないけど、もっともっと豊かな”個人運動”があることを、ぼくたちは知ってるよね。
その個人運動のひとつの形としてぼくは死んでいくわけですから。

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やまお さんせい
詩人。1938年東京神田生まれ。早稲田大学文学部西洋哲学科中退。 77年鹿児島県屋久島に移住。執筆と農耕の日々を過ごす。 エッセイ集も数多い。2001年8月28日、屋久島にて亡くなる。   
posted by パイン at 17:51| 鹿児島 ☔| Comment(0) | mumu の日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする